外国人雇用担当者が押さえておくべき「在留カード」の6つのポイント
現在、少子高齢化の影響から働き手が不足しており、日本の労働力を補うために外国人雇用を行う企業もどんどん増えています。
そこで本記事では外国人雇用を行う上で知っておきたい「在留カード」についての解説と取得方法などの押さえておきたい確認ポイントをまとめました。これから外国人雇用を始めようと思っている事業主の方や、労務を担当する方にとって必要な情報となりますので、ぜひご一読ください。
在留カードとは?
在留カードとは、日本で中長期在留する外国人に対して、上陸許可や,在留資格の変更許可,在留期間の更新許可等、在留に係る許可に伴って交付されるものです。法務省から許可を受けた在留資格と在留期間を記載した証明書となり、日本に在留することが許された「許可証」として交付されるカードです。在留カードには,顔写真のほか氏名,国籍・地域,生年月日,性別,在留資格,在留期限,就労の可否などの情報が記載されます。
従来は外国人登録証明書として発行されていましたが、それが在留カードに置き換わりました。
在留カードは、新規の上陸許可、在留資格の変更許可や在留期間の更新許可など在留資格に係る許可の結果として我が国に中長期間在留する者(中長期在留者)に対して交付されます。したがって、出入国在留管理庁長官が我が国に中長期間滞在できる在留資格及び在留期間をもって適法に在留する者であることを証明する「証明書」としての性格を有するとともに、上陸許可以外の在留資格に係る許可時に交付される在留カードは、従来の旅券になされる各種許可の証印等に代わって許可の要式行為となるため「許可証」としての性格を有しています。
出入国管理庁 在留カードとは?
在留カードに記載される内容
在留カードは運転免許証のようなプラスチック製のカードでカードの表と裏には出入国在留管理庁長官が把握する情報の重要部分が記載されています。
- 番号
- 氏名
原則ローマ字表記ですが本国において氏名に漢字が使用されている方は併記することも出来ます。 - 生年月日
- 性別
- 国籍・地域
- 住居地
- 在留資格
- 就労制限の有無
- 在留期間(満了日)
- 許可の種類
- 許可年月日
- 交付年月日
- 有効期限
- 顔写真(16歳以上)
- 住居地記載欄
- 資格外活動許可欄
- 在留期間更新等許可申請
在留カードには偽造防止のため、ICチップが搭載されており在留カードに記載している内容の全部または一部が含まれています。
交付の対象者
在留カードの交付対象は日本に中長期在留する者です。観光で入国する短期滞在者や3か月以下の在留期間が決まっている人には交付することはありません。
中長期在留する者とは以下に当てはまらない人のことです。
- 「3月」以下の在留期間が決定された人
- 「短期滞在」の在留資格が決定された人
- 「外交」又は「公用」の在留資格が決定された人
- 1から3の外国人に準じるものとして法務省令で定める人
- 特別永住者
- 在留資格を有しない人
在留カード取得までの流れ
日本に入国を希望する外国人または日本在住の代理人が申請書類を準備し、地方出入国在留管理局の窓口に申請書を提出し、事前に在留資格認定証明書交付の許可を受ける必要があります。(短期滞在を目的とする者を除きます。)
上記申請により、出入国在留管理庁で審査され許可を受けた外国人に対し「在留資格認定証明書」が交付されます。「在留資格認定証明書」は、通常1ヶ月〜3ヶ月の処理期間を要するため、早めの申請を心がける必要があります。
ビザ(査証)は、在外日本大使館や領事館にて取得する必要があります。
日本に入国する際には原則としてその取得が求められています。
ビザは、入国する外国人本人の持っている旅券が有効であることを証明し、入国をしても問題が生じないという推薦の意味があります。
短期滞在のビザ(査証)免除という取り決めがあるため、短期滞在の目的で日本に入国する場合、対象国や地域のパスポートを所持している者はビザ無しで入国が可能です。
上陸港にて旅券、ビザを提示、在留資格認定証明書を提出し、旅券に上陸許可の証印を受けるとともに、日本に中長期在留する外国人に対して交付される在留カードの交付を受けます。
(上陸は、原則として在留資格認定証明書交付日から3ヶ月以内に行うこと)
ビザ(査証)と在留資格の違い
日本では、ビザという言葉が一般的になり、ビザ=在留資格と思っている方も多いのですが、厳密には全く異なるもので管轄する省や意味も違います。
簡単に言うと、ビザは外務省が管轄しており旅券(パスポート)が有効であるという確認と、入国することを許された許可証で、在留資格は法務省が管轄しており日本に在留して行うことのできる活動について証明するものです。
ビザ(査証)=日本に入国することが出来る許可証(入国するために必要)
在留資格=日本で活動することが出来る許可証(在留するために必要)
交付までの期間と受け取り方法
在留カードの交付は、入国する場所によって交付日が変わります。
以下の7つの空港から入国する際は在留カードは入国した時に交付されます。
在留カードを交付する空港の上陸審査場では、在留カード交付対象となる中長期在留者は観光や商用で入国する一般の外国人と審査ブースが分かれているのでご注意ください。
在留カードの交付時には、カードへの印刷、カード記載内容の確認、住居地届出の案内等が行われます。
- 新千歳空港(北海道)
- 成田空港(千葉県)
- 羽田空港(東京都)
- 中部空港(名古屋県)
- 関西空港(大阪府)
- 広島空港(広島県)
- 福岡空港(福岡県)
上記の出入国港以外を経由して入国する場合は、旅券に上陸許可の証印後「在留カードを後日交付する」旨の記載をし、入国後に市町村窓口に届け出た住居宛てに簡易書留で郵送されます。(郵送には届出から10日後程度かかります)
出入国港において在留カードが交付されたら住居地を定めてから14日以内にカードを持参して、住居地のある市町村窓口で出入国管理庁長官へ届出を行ってください。
在留カードを発行している空港では、原則として上陸許可に伴って在留カードを発行しています。そのため入国後に市町村や受け入れ機関等で在留カードを受け取ることはできません。空港で受け取らなかった場合、後述する罰則が科せられることがあります。
在留カードの有効期限と更新申請
永住者・高度専門職2号と16歳未満の外国人を除く、中長期在留者の在留カードの有効期限は在留期間の満了日と同日になります。
つまり、在留資格の有効期間=在留カードの有効期限なので、在留資格が切れると在留カードも失効してしまいます。
在留カードの有効期間 | |
---|---|
中長期在留者(16歳以上) | 在留期間の満了日まで |
永住者・高度専門職2号 | カード交付日から起算して7年(在留期間に上限なし) |
16歳未満の永住者 | 16歳の誕生日まで |
16歳未満の永住者以外 | 在留期間満了日か16歳の誕生日の早い方 |
永住者と高度専門職2号(16歳以上)の外国人の方は、有効期間満了日の2か月前から満了日までの期間に更新申請を行い、16歳未満の外国人の方は、16歳誕生日の6ヵ月前から誕生日までに更新申請を行う必要があります。
在留カードの更新申請
中長期在留者以外の方は在留カードの有効期限が切れる前に更新手続きを行う必要があります。
在留期間更新手続きは以下のタイミングで住居地を管轄する地方出入国在留管理局で申請を行ってください。
在留カードの更新タイミング | |
---|---|
中長期在留者(16歳以上) | 満了日の概ね3ヵ月前に在留期間の更新手続 |
永住者(16歳以上) 高度専門職2号 | 満了日の2か月前 |
16歳未満 | 16歳の誕生日の6ヵ月前 |
中長期在留者の場合、カード有効期限と在留資格の期限が同日であることが多いためカードの更新手続きではなく在留期間の更新申請の手続きが必要です。
在留期間の更新手続きは期間が満了する概ね3ヵ月前から申請可能です。また入院や長期出張等の特別な事情が認められる場合は、3か月以上前から申請を受け付けることもあります。
申請の標準処理期間は2週間から1か月程度とされていますが、申請する資格内容や時期によっても大きく変動します。長いと2か月以上かかることもあるため、更新申請中に在留資格の有効期限が失効してしまわないように、早めの手続きを心がけましょう。
また更新時にはそれぞれの在留資格によって必要な書類を添付して提出しなければいけません。そのため書類の準備期間も含めて動く必要があります。前倒しに行動して更新申請が開始する時期が来たら、すぐに更新申請を行えるように準備しておくことが重要です。
在留期限と在留カードの有効期限の違い
在留期限とは、在留資格そのものの有効期間のことを言い外国人が日本にいることが出来る期間です。在留資格の有効期間を過ぎてしまうと不法滞在者(オーバーステイ)となり、犯罪扱いとなってしまい雇用している企業も責任が問われる場合があります。
一方、在留カードの有効の期限は身分証としての在留カードの有効期限です。カードの有効期限が切れていても在留資格そのものがなくなるわけではありませんが、更新手続きを行わない場合の罰則もあるため期日までに更新手続きを行うようにしましょう。特に永住者や高度専門職2号の方は交付日から7年の有効期限となっているため注意しましょう。
在留カードに関連する手続きについて
在留カードには更新手続き以外にも、内容に変更があった際には速やかに各窓口へ届出る必要があります。
基本的には変更があった日若しくは知った日から14日以内に届出が必要です。
転居など住所変更
中長期在留者が、居住地を変更した場合は変更後の住居に移転した時から14日以内に在留カードを持参して、移転先の市区町村窓口でその住居地を届出る必要があります。
氏名・生年月日等の変更
結婚して姓や国籍が変わるなど、氏名,生年月日,性別,国籍・地域が変更した場合は、14日以内に地方出入国在留管理官署へ届出る必要があります。
紛失などによるカード再交付申請
在留カードの紛失や盗難、滅失、著しい汚損をした場合は地方出入国在留管理官署に在留カードの再交付を申請してください。無償で再交付できます。
在留カードの紛失や盗難、滅失した場合はその事実を知った日(海外で知ったときは再入国の日)から14日以内に再交付の申請を行ってください。申請の際には警察署で発行される遺失物届受理証明書、盗難届受理証明書、消防署で発行される災害証明書等の疎明資料を持参してください。
またカードに著しい汚損等が無くても交換を希望する場合は再交付申請をすることが出来ます。その場合手数料が必要となります。(実費を勘案した手数料1,600円の負担)
所属機関・活動機関・配偶者に関すること
中長期在留者のうち就労資格(芸術・宗教・報道を除く)や留学・研修・技能実習の在留資格を持って在留する方は、所属機関に関して変更が生じた場合、14日以内に出入国在留管理庁長官への届出が必要です。
- 所属機関の名称変更
- 所属機関の所在地変更
- 所属機関の消滅、離脱(契約終了)
- 所属機関の移籍(新たな契約締結)
上記と同じく、教授、高度専門職1号(ハ)、高度専門職2号(ハの活動を行う方)、経営・管理、法律・会計業務、医療、教育、企業内転勤、技能実習、留学、研修の在留資格をもって在留する方は,活動機関に関して変更が生じた場合14日以内に出入国在留管理庁長官への届出が必要です。
- 活動機関の名称変更
- 活動機関の所在地変更
- 活動機関の消滅、離脱
- 活動機関の移籍
中長期在留者のうち、配偶者として家族滞在・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等の在留資格を持って在留する方が、配偶者と離婚又は死別した場合には14日以内に出入国在留管理庁長官への届出が必要です。
在留カードに発生する義務と罰則
携帯・提示・更新・返納の義務
在留カードを交付された方には入管法によって在留カードを常時携帯することが義務付けられています。それに加えて、在留の合法性、資格外活動の可否、上陸・在留の許可に付けられた条件に違反していないかを即時に把握するため、入国審査官、入国警備官、警察官等、権限ある官憲などからカードの提示を求められた場合には提示する義務があります。
但し、16歳未満の在留者はカードの常時携帯義務は免除されています。
そして、提示を求める側にも身分証の携帯を義務付けおり、請求された場合には身分証を提示しなければなりません。
2 中長期在留者は、出入国在留管理庁長官が交付し、又は市町村の長が返還する在留カードを受領し、常にこれを携帯していなければならない。
3 前二項の外国人は、入国審査官、入国警備官、警察官、海上保安官その他法務省令で定める国又は地方公共団体の職員が、その職務の執行に当たり、これらの規定に規定する旅券、乗員手帳、特定登録者カード、許可書又は在留カード(以下この条において「旅券等」という。)の提示を求めたときは、これを提示しなければならない。
4 前項に規定する職員は、旅券等の提示を求める場合には、その身分を示す証票を携帯し、請求があるときは、これを提示しなければならない。
入管法第二十三条(旅券等の携帯及び提示)
また在留カードに記載している内容に変更があった場合は、カードの内容を常に最新の情報にするために変更届を行う更新の義務があります。内容変更(更新)の届出については所定の管轄窓口で行います。
その他、有効期限が過ぎて不要になった在留カードは原則返納する義務があります。もし交付された外国人が死亡した場合は親族または同居人が14日以内に返納してください。
罰則について
上記以外にも在留カードを交付されたら、従わなければいけない様々な義務があります。
これらを守らない場合は処罰の対象となるため注意しましょう。
- 在留カード受領を拒否したとき
-
入国時に在留カードを発行している空港で受け取り拒否した場合は、入管法第75条の2の規定により、1年以下の懲役又は20万円以下の罰金対象。
- 携帯義務に違反したとき
-
在留カードを携帯していなかった場合、20万円以下の罰金対象。
- 提示義務に違反したとき
-
審査官や警察官などの提示要請に従わなかった場合、1年以下の懲役または20万円以下の罰金対象。
- 更新義務に違反したとき
-
有効期限内に在留カードの更新手続きを行わなかった場合、1年以下の懲役または20万円以下の罰金対象。
- 返納義務に違反したとき
-
失効した在留カードの返納を行わなった場合、20万円以下の罰金対象。
- 再交付申請に違反、または再交付申請命令に従わないとき
-
紛失や汚損による再交付申請を行わなかった場合、もしくは在留カードの再交付申請命令を受けて14日以内に再交付申請をしなかった場合、1年以下の懲役または20万円以下の罰金対象。
- 偽造・変造された在留カードを所持
-
偽造または変造された在留カードを所持もしくは提供した場合、もしくは偽造・変造に関わった場合、自分の在留カードを他人に提供した場合のいずれも刑事罰の対象となります。
その場合は、退去強制事由に該当します。
雇用する企業が確認するべき項目
在留カードの確認ポイント
- 本人かどうかの確認
- 在留カードの有効期限を確認 在留期間内であるかどうか
- 在留資格と就労の可否を確認 可なら就労可能*①
- 資格外活動許可を得ているか確認 ③で不可の場合裏面の資格外活動許可欄も確認する*②
在留資格にはその資格によって働くことが可能な資格と働くことが許可されていない資格等があります。ポイント①~④を順に確認しましょう。
*①もし確認を怠り本人の言うことを鵜吞みにして就労資格のない者を働かせてしまうと、不法就労にあたり雇用した側も不法就労助長罪に問われ、最長3年の懲役または最大300万円の罰金もしくはその両方が科せられる可能性があります。
そういった事態を避けるためにも、雇用する企業は在留カードに記載の「就労の可否」を確認することが重要です。
*②特に就労不可の留学生などのアルバイトを雇う場合は裏面の資格外活動許可欄に記載されているか確認しましょう。
「許可:原則週28時間以内・風俗営業の従事を除く」の記載がある場合は就労可能です。
以上の項目について確認が必要となりますが、在留カードの提示に関しては本人の同意の上で提示してもらう必要があり、強制することはできません。また、個人情報保護の観点からも日本人同様にデリケートな扱いが必要になることを忘れてはいけません。
在留カードには偽造の可能性も
犯罪組織が非常に精巧な在留カードを偽造し、摘発されたと言う報道を耳にします。雇用主が普段見慣れない在留カードの真贋を判別することは難しいでしょう。そこでカードの鑑定方法をいくつかご紹介します。
①在留カードのそのものをチェックする
在留カードには簡単に偽造・改ざんがされないように様々な工夫が施されています。
例えば、ホログラム加工を行い傾けることでMOJの文字が立体的に見えたり、透かし文字がある、色が反転するなどします。
詳細は出入国在留管理庁の「在留カード」および「特別永住者証明書の見方」で確認することができますが、これらと違うものは偽造カードの可能性があります。
②在留カード読み取りアプリで確認
出入国在留管理庁では在留カード等読取アプリケーションの無料配布を行っています。
このアプリは在留カードにあるICチップを読み取ってその情報が偽造・改ざんされたものではないことを確認することが出来、ダウンロードは出入国在留管理庁のホームページから行えます。
但し、利用には本人の同意が必要です。
このアプリケーションは、法令で定めるもの以外に雇用契約や諸取引などの場で、身分確認を行う必要がある場合に利用するものです。御利用の際には、他の身分証明書と同様、本人の同意を得た上で在留カード等の提示を受けることが必要です。
出入国在留管理庁では在留カード等読取アプリケーション概要
③ 在留カード等番号失効情報照会にかける
在留カードの期限出入国在留管理庁「在留カード等番号失効情報照会」で在留カード番号が失効していないかどうかを調べて確認することが出来ます。しかし、実在するカード番号を悪用している可能性もあるため、番号の有効性は確認できたとしてもカードそのものの有効性を証明するものではありません。